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イサーク・アルベニス(Isaac Albeniz)作曲
〈コルドバ〉T.61D
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〈コルドバ〉 中〜上級 T.101D  作品232―4、 へ長調/ニ短調、4分の3拍子、アンダンティーノ、約6分、 1894年頃作曲。

 この作品は、馴染みのある3拍子で書かれていますので 比較的演奏しやすく、また美しいメロディが印象的で演奏会に 効果的です。
 タイトルは最初の「コ」にアクセントをつけて発音しますが、なかなか日本では平らに「コルドバ」と読んでしまうことが多いようです。
コルドバとは、スペイン南部アンダルシア地方の都市の名前で、ここは昔イスラムの首都でした。
大河グァダルキビールにかかるローマ橋を渡っていくと、アーチ型の柱に圧倒されるイスラムのモスク(寺院)、花々が飾られた白壁の家並みが広がり、アンダルシアの碧い空に町が輝いているように思えます。 この曲は、そんなコルドバをテーマにした物語風な作品です。

〜〜♪ さて、楽譜を見てみましょう。

タイトルの右の小さな活字はアルベニスによる詩で、「静かな夜、ジャスミンの香りをのせた、芳しいそよ風を遮って、セレナードの伴奏をするグスラの音がする。
それは、時に情熱的に、そしてときに高い空に揺れている椰子のように、とても甘い音で響く」と、スペイン語で書いてあります。

グスラというのは、リュートに似ていますが、弓で演奏する楽器です。  

〜〜♪

1〜2小節・・遠くからカトリックの教会の鐘が聞こえます。
3〜29小節・・静かに聞こえてくるのは教会の鐘カリオン のような響きです。
30〜52小節・・ここは、順次進行が多く続くメロディ ですからカリオンというよりも、賛美歌かもしれません。
ここで使われているハーモニーは、同じ時期(1893〜95) に作曲されたオペラ《ヘンリー・クリフォード》の 〈プレリュード〉に大変良く似ています。
カリオン、または賛美歌、どちらにしても遠くから美しい メロディがコルドバの町に響きます。

53小節〜ここから動きのあるリズムの伴奏が始まります。
文献によっては、ここは「パソ・ドブレ」である、と述べている ものもありますが、私の意見はちょっと違います。
確かに1ト2ト3ト、というように裏拍に和音があり、 調子よさそうなリズムに思われますが、パソ・ドブレとは 2拍子の闘牛場の音楽ですから、不適切のように思われます。
アルベニスの詩にあるように「セレナード」が聞こえてくる わけですから、この伴奏はギターのアルペジオや和音の爪弾き であり、調子よく、というよりは、むしろ、ひそやかな感じです。
裏拍での伴奏の和音は強くならないようにしましょう。
弓で奏するグスラの音はバスに現れる旋律や57小節目からのテーマではないかと考えられます。
メロディは哀愁が漂い、アラブの伝説の世界が拡がるようです。

〜♪ 93小節ぐらいから、はシンコペーションのリズムの伴奏を伴ない、幻想的に曲は広がっていきます。
メロディになっているソプラノの声部とリズムを軽やかに刻んでいる内声とを音色に違いをつけるように演奏しましょう。
101小節目からも左手のテノールとバスとをちゃんと区別して 奏することが大事です。特に3拍目の8分音符は軽くスタッカート気味にします。
右手は101〜108小節までのメロディがまとまるように 弾きます。
徐々に強くなってクライマックスを迎え、133小節から右手の内声に闘牛場のトランペットの音が現れます。
左手がトレモロですし、トランペットの音を響かせるように弾くのはちょっと難しいですが、頑張ってみましょう。

149小節で、突然、静かな鐘の音(賛美歌?)に遮られ、 その後、グスラの調べがまるで回想シーンのように静かに 聞こえてきます。

 ABA形式が多いアルベニスの作品のなかで、珍しく 形式的にも変化があり、魅力的な曲となっています。

〜〜♪

グスラという楽器をつかった東洋的なメロディと、カトリック の教会の鐘や賛美歌が聞こえるというのは、1492年以前の イスラム支配とそれ以降のカトリック両王による支配という 歴史をもつスペインを象徴しており、その意味でも興味深い 作品です。 ほとんどのフレーズが、なだらかなメロディとリズミカルな 伴奏で書かれていますので、メロディの歌い回しを、その 伴奏に束縛されずに、充分に歌いこめるように奏するのが コツです。 是非レパートリーに加えてくださいね。

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